コーヒー10杯分+サービス1杯のチケットを今日で使い切る。豊かでない個人商店であろうと、余計な心配をしてチケット最後のサービス1杯分を飲む日には翌日から使う新たなチケットを2500円払って買うことにしている。
レジのお姉さんに、いつものブレンドコーヒーを注文し、じゃチケットも貰いますと財布からお札を出してスタンプを押していない真新しいチケットを受け取る。
お互い顔を見合わせ、お姉さんは感謝とともにそこから立ち去るよう促し、自分は懇願するような視線を送る。注文したコーヒーを注いで渡してくれない。
一昨日、少な目に注がれたコーヒーをもうちょっと下さいなと言えず、気弱な自身の性分への自責の念に捕らわれた苦い思いでが頭をよぎる。このまま、立ち去って地下鉄で会社へ向かうのか。毎朝の楽しみであるカフェでのコーヒーを飲まずに張り切って働けるのか。180㎝もの身長、短髪で厳つい体型の中年男性が子供っぽいおねだりをしたと軽蔑されやしないか。
刹那、様々なことが自分を悩ませるが、ついに決心がついた。あのー。コーヒーは…とお姉さんに告げる。あっ、スイマセンと白く暖かみがある陶器のカップにコーヒーを注いでくれた。
よかった。お姉さん、コーヒー注いでよ。とようやく言えた。勇気を振り絞り、強い気持ちで自分の要求を強いる。しかもお姉さんも特に不快な表情をしていないばかりか、カップを持って席に行こうとする時笑顔まで向けてくれた。自分の大きな成長を喜び、コーヒーを飲んで朝の幸せに満たされた。
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